暮らしのコラム

2018/3/30

高齢化社会の中で・賃貸の相続って何?

父親の名義で借りていた家に家族で住んでいるが、両親ともに年老いてきた。
今後父親が亡くなった時、住まいはどうなってしまうのか?もしかして追い出されてしまうのか?
老いた母と別居しているが、万が一があったらどう対処しようか?などと不安を抱えていることはないでしょうか。
また、内縁の関係の場合はどうなるのでしょうか?
そんなお悩みと賃貸の相続について解説致します。

 

 

(1)亡くなったことを理由に住まいを追い出される?
(2)公営住宅の場合は注意が必要
(3)名義の書き換えはいつするか
(4)家賃滞納など、滞納金がある場合は
(5)相続に限らずじっくり話し合いを

 

 

亡くなったことを理由に住まいを追い出される?

家や土地の「賃借権*」は相続財産として相続の対象になっています。

借主(契約者)が亡くなってしまった場合、
法定相続人が権利を相続しますので、賃借契約は「有効」となります。

例えば契約をしていたお父さんが亡くなった場合でも、奥さんや子供達がその権利を相続します。
この時、貸主(大家さん)は「賃借権」の相続を拒否することが出来ません。

そのため、契約者が亡くなったことを理由に立ち退きを要求されても応じる必要はありません。
また同居中、別居中関係なく賃貸借契約を解除することは出来ません。

 

事実婚の妻または夫や、事実上の養子など、
亡くなった人と内縁関係にあった人で、借主(契約者)に相続人がいない場合、
「借地借家法」によって権利の相続が認められます。

その場合は「特別縁故者」として引き継ぐことが可能です。

近年では、相続人がいる場合でも内縁関係にあたる人が引き続き住まう権利を保護する事例が増えていますが、相続人と早期に話し合うことが望ましいとされています。(原則として賃借権の継承は出来ず、援用するといった扱いになるため。)

「借地権」にはそういった特例がないため、前もって、正式な遺言書や生前贈与して名義の書き換えなどをしておく必要があります。

 

*)「賃借権」は貸主(大家さん)と借主(契約者)が自由意志により締結した「賃貸借契約」に基づく権利であり、「借地借家法」によって規制される「賃貸借契約」のことを意味します。

 

 

公営住宅の場合は注意が必要

公営住宅は、「国民生活の安定と社会福祉の増進に寄与することを目的とした住宅」であり、入居者は条例で定められた選考基準を満たす者のみとされていますので、誰でも自由に入居が出来るものではありません。
例えば収入が規定額を超えた場合や、要件を満たすことが出来ない場合は貸主(公営住宅の場合は地方公共団体)が立ち退きを求めることが出来るようになっています。

そのため、公営住宅の「賃借権」は相続の対象ではないという扱いになっており、通常の「賃借権」とは少し異なる性質を持ちます。
つまり入居者(契約者)が亡くなった場合は相続人が権利を引き継ぐことが出来ないのです。

 

ただし、相続人も入居基準を満たしている場合は、必要な手続きを行えばその後も住み続けることが可能になります。
必ず住居を管理している「住宅供給公社」に問合せを行いましょう。

 

 

名義の書き換えはいつするか

借主(契約者)が亡くなった後も、解約せずそこに住まうという場合、
新規契約でも更新でもなく、相続により名義が変更になるだけです。
契約更新の際に新しく契約書を修正してもらう、ということもよくあり、そのままでも問題はありません。
なお、契約書を新しい名義に変更してもらう際の手数料は支払う義務がありません。

ただ、「賃借権」だけではなく、契約時に預け入れている「敷金の返却請求権」、「毎月の家賃の支払い」も相続されますので、相続人が決まった時点で貸主(大家さん)に連絡を取り、どうすれば良いかを相談して下さい。

また、保証会社にも連絡が必要です。
保証会社により手続きは異なります。手持ちの資料で不明ならば直接問合せを行ったほうがよいでしょう。

 

 

家賃滞納など、滞納金がある場合は

「賃借権」は相続財産として相続の対象になっていると記述しましたが、
例えば、別居中のお父さんが家賃を滞納したまま亡くなってしまった場合、滞納金の支払いが困難であれば相続放棄すれば支払いの義務は無くなります。原状回復費用などについても同様です。
その際は当然ですが敷金は返却されません。

連帯保証人となっている場合、相続放棄をしても返済義務が残ります。
また、亡くなった方の預貯金・現金から家賃や原状回復費用を出してしまうと、相続放棄が出来なくなってしまう可能性がありますので注意して下さい。
支払いが困難である場合は、債務整理を検討せざるを得ないことになります。

 

支払う際は、領収書の宛名については「連帯保証人名」にしてもらいましょう。
「○○の相続人 ○○」など亡くなった方の相続人ととられる記載をされると、
相続放棄と矛盾することになりますのでこちらも注意が必要です。

 

 

相続に限らずじっくり話し合いを

普段から一緒に生活していても、世帯主でない場合は、住まいの契約がどうなっているか分からなかったり、
別居していて長いこと連絡を取っていない状態だったりすると、不測の事態が訪れた場合に対応出来ない可能性があります。
特に最近では高齢化社会がすすみ、独居老人の孤独死といったニュースもよく耳にします。

 

元気に動けているうちは、まだそういった話は早いと、避けられてしまうこともあるようですが、
万が一の際はどうするか、どうなっているのか、時間をかけてでも話し合いをしたほうが良さそうです。
お金が絡んでくるので、嫌な思いもするかもしれません。
しかし、決して焦らず、怒らず、じっくりとコミュニケーションを取ってみてはいかがでしょうか。